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酒田市にある土門拳記念館が美しい。その建物も、扉も、展示も。そもそもは、酒田という街がじつに美しいのです。庄内の海はしょっちゅう荒れるのですが、ひとの心はやさしくオープンです。庄内の平野はだだっ広いのですが、まったく退屈しないです。昭和を代表する写真家・土門拳が生まれたこの街は、歴史と文化を感じさせる、じつに品のある街です(ちなみに土門は、1909年生まれ。酒田に暮らしたのはわずか6歳までだそうです)。そして、この美術館は、飯森山と呼ばれるこの街の小さな山の麓の、小さな湖畔に建てられています。設計は谷口吉生。銘板は亀倉雄策、中庭の彫刻はイサム・ノグチ。

世界でも珍しいという、たった一人の作家のための写真美術館であるこの土門拳記念館には、土門の全作品約7万点が所蔵されています。素人目ながら、僕はとくに、仏像の写真がいいと思っています。その表情、質感、佇まい、空気…。仏像というものがこういうものであったのかということを、土門の写真を見ることで、初めて知ったような気持ちになります。千手観音の手のなんと見事なことか。薬師寺東院堂観音菩薩の横顔のなんと美しいことか。仏像を見て惚れ惚れするという体験を、ここで、体験することができるのです。

2014.11.6 Mikio Soramame