tyougyo

酒田に暮らしていた頃、かつてこの町を訪れたという開高健の足取りを追いました。
彼が1メートル級のスズキを狙っていたという最上川河口、
彼が釣り具を買ったというフィッシングトミヤマ、
彼がうなったというフレンチ、ル・ポット・フー。
彼の色紙が残っていた料理店・魚一。
生き生きとした知識と、卓越した人間味、ユーモアあふれる開高健を
身近に感じてうれしくなったものです。

『私の釣魚大全』はその名の通り、開高健の釣りバカ日記。
文章がカッコよくて面白いから、釣りを知らなくても面白い。
凄い。凄い引きだ。剛勇無双。グラス竿が円となってしなる。糸が右に左に奔走し、そのたび体が持っていかれそうになる。ブルブルふるえる竿にしがみつき、舟べりにしがみつき、眼は見えず、耳は聞えず、ただもう竿をたてて糸をつっぱるだけ。脈拍異常。呼吸困難。のどがしめつけられる。ああ。何という強力。リールを巻きあげようとしてもビクともせず、歯車がガリガリ、ガリガリと歯嚙みの音をたてる。ジーッ、ジーッと鳴って糸がひきだされていく。ふいに暗い水をはじいてサケの顔があらわれ、グイと首をねじって消える。閃いた銅の太さ。厚さ。虹の閃光。ゆるい波紋の大きな、深遠なひろがり。全身がふるえはじめた。
「つっぱれ!」
「もう一回顔をだすゾ!」

おすすめです。
ちなみに最上川でのお話も、ちゃんと、あります。

2015.1.7 Mikio Soramame