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『土門拳のすべて』は、土門拳記念館の作品図録。
全時代の写真がわかりやすく掲載されています。
末尾には、勅使河原宏や重森弘淹による土門拳解説や、
土門本人のエッセイが収録されています。
グラフィックデザイナー亀倉雄策による土門評がとてもいいです。

土門の写真というのは、こうした日常の行為が持つ人間のカタチがそのまま出ている。そのカタチが芸術というものに作用するのだから、私は人間の才能というのは、本当に神秘そのものだと思う。たしかに土門は天才だと思う。しかし、いわゆる世間でいう天才肌という姿勢とはまるで違う。鋭いとか才気煥発といったものではない。だからパッパッと早いスピードでシャッターを押して、さっと引き揚げるという撮影法ではない。じっくりと考え、じっくりと観察して、撮影の対象物を自分のものにしてしまわない限りシャッターを押さない。だから仕切りの長い相撲である。静物ならいいが、人物となると大変だ。土門先生に撮ってもらえば名誉この上ないと感激している人なら、この仕切りの長さにも耐えられるし、その上さすがに巨匠であると関心もする。しかし、ドモンなんて変な名前の写真屋風情がもったいぶってなかなかシャッターを押さないとなると、これは問題だ。「もうドモンの撮影はお断りだ」といって怒る人もいる。それを乗り越えなければいい写真が撮れないので、ドモンは相手の感情なんか気にもかけないでねばりにねばる。だからドモンの写真はねばりにねばった究極の写真ということが出来よう。彼はねばりの天才だったのだと思う。(「ねばった究極写真」倉亀雄策 より抜粋)

じつに明快で、イメージしやすい文章で、素敵です。

2015.1.8  Mikio Soramame